第79章

加藤柚奈は彼の不機嫌さを察し、それ以上は突っ込めなかった。

「本当に誤解です。ただ教授のことが心配で……」

「余計なお世話だ」

最後の学生が答案を提出すると、岩崎晴翔は束になった試験用紙を抱え、踵を返して教室を出ていく。

加藤柚奈はその背中を睨みつけ、鼻で嗤った。

——私情で甘い採点なんて、絶対に許さない。

もし本当にそんな真似をしたら……教授だろうが何だろうが、身の破滅くらい簡単に作ってやる。

……

大島莉理は校門前に停まっていた濃紺のロールス・ロイスを見つけると、妙な遠慮もせずにそのまま乗り込んだ。後部座席には田中辰哉がいて、膝の上にはノートパソコン。

この人、息をして...

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